はんだ不濡れの原因と対策

コテ付けではんだの不濡れを起こす一番の原因は熱不足によるものです。 熱不足になる要因として次のようなものが挙げられます。 ・コテ先温度が低い。 ・コテ先形状が不適切。ハンダ付け部にコテ先がしっかりと接していない。 ・コテ先の熱容量が足りない。大きい部品や、熱が逃げやすいはんだ付け部では、熱容量の小さい細いはんだコテではなかなか温度は上がりません。 ・コテを当てている時間(加熱時間)が足りない。はんだ付け部にはんだを供給してはんだが溶けても、はんだが濡れ広がるまで時間がかかる場合があります。しっかりとはんだが濡れたのを確認してコテを離してください。 基板や部品が吸湿していると、その水分が突沸する事ではんだを弾き飛ばしてしまい(※飛散)、不濡れの原因になります。 また、そもそも水分を含んでいるということは、部品や基板の酸化が進んでいることが考えられるため、もともと濡れにくい状態にあります。金属表面が強固な酸化物で覆われている場合、フラックスで酸化物を十分に除去する事が出来ず、はじきや不濡れが発生します。 また、基板や部品の汚れも不濡れの原因になります。 ※はんだやフラックスの飛散に関しては、次のページでも説明しています。 はんだ、フラックスの飛散原因と対策について 通常、基板の銅部分には、酸化を防止するためにメッキをかけたりプリフラックスを塗布したりして大気中に曝露しないようにされています。 基板自体の保管状態が悪いと、その表面のプリフラックスやメッキが劣化します。 またメッキが薄くなっている場合は、金属化合物が表面に露出して、それ自体はんだが濡れ難いです。 一般的に銅は濡れやすい金属ですが、ニッケル、ステンレス、アルミは濡れにくい金属です。 それらにはんだ付けする場合には、通常のはんだでは濡れにくいこともありますので、はんだ付けする金属に合わせて適切なフラックスを使用する必要があります。 弊社では、ステンレス用糸はんだとして「UX」を、糸はんだでニッケルにはんだ付けする際の補助フラックスとして「ニッケル用液体フラックス」をご用意しております。 製品一覧 ニッケル用液体フラックス 不濡れの原因としては、次の事が考えられます。 (1)コテ先及びはんだ付け部分の温度が十分に上がっていない (2)はんだ付けする基板や部品が吸湿や汚れがある (3)基板ランドのプリフラックスやメッキが劣化している (4)はんだ付けする金属に合わせて適切なフラックスを使用していない 対策としては、 (1)使用するはんだごての特徴を確認し、コテ先、はんだ付け部に熱を伝え、適正な温度加熱してはんだ付けする 参考:はんだ付けの基礎知識や注意点 (2)基板や部品の保管管理をして、また吸湿や汚れがないかどうか確認する (3)基板ランドのメッキが剥げていないかどうかを確認する (4)はんだ付けする金属に適切なフラックス(やに入りはんだ)を使用しているかどうかを確認する

はんだが溶けない原因と対策

従来のすず鉛はんだと現在主流である鉛フリーはんだと比較した場合、 鉛フリーはんだの方が融点が高いため、溶けにくいという事はあります。 代表的な鉛フリーはんだSn-3.0Ag-0.5Cuの融点は217℃です。はんだ付けする際には、はんだ付け部がはんだ合金融点のプラス50℃位に加熱できるようにコテ先温度やコテ先形状などを設定する事が重要です。 注意点としては、フラックスが焦げてしまわないように、コテ先温度を上げすぎないようにすることです。 次のぺージでは、はんだ付けの基礎知識について説明していますので参考にしてみて下さい。はんだ付けの基礎知識と注意点 はんだ付け後は、コテを上手に当てないと熱が伝わらず、はんだは溶けにくいものです。 そのため、はんだ付けされている部品の位置の問題で、しっかりとはんだにコテ先が当たっていないというケースもあるかもしれません。 はんだにコテ先が当たっているにも関わらず溶けにくいという場合、熱がしっかりと伝わっていないことが原因であると思われます。 より熱をしっかりと伝えるために、コテ先に少量の糸はんだを溶かした状態で、固まったはんだにコテ先を当てる事でより熱が伝わりやすくなります。 また、はんだ付け後、年数が経過している場合に、はんだが溶けにくいという話も聞きますが、年数が経っていても熱がしっかりと伝われば、はんだは溶けます。 但しはんだ付けした表面にほこりや汚れ等が付着していると、熱がしっかりと伝わりませんので、そのような場合には、ほこりや汚れを取り除いてから作業する必要があります。 はんだが溶けない場合の原因は、熱がしっかりと伝わっていないからです。 対策、注意点としては、 ・コテ先温度とコテ先形状を選定する。 ・コテ先先端に糸はんだを付けると、より熱が伝わりやすく、さらにフラックス効果で溶けやすくなる。 ・はんだごての性能にもよるため、使用するはんだごての特徴を理解する

リフロー炉の冷却速度ではんだ(Sn-Ag-Cu)の光沢が変わる?

コネクター部分全面にソルダーペーストをベタ印刷しリフロー炉へ。 コネクターを上向きと下向きで流し、仕上がりを比較した。 ①フィレットの光沢の違いは、ピンが上向きだとリフロー炉から出て急速に冷却される為、光沢がありきれいである。 ②ピンが下向きでは下部のアルミパレットからの輻射熱で冷却が遅れデンドライドが出て、光沢が失われる。 温度プロファイルの設定は上部ヒーターより下部ヒーターを高目に活用することで基板への加熱効率が高まり全体の加熱時間が短縮出来る。これはフラックスの性能も最大限に引き出すことが可能である。 リフローはんだ付けの基本原理は基板ランドの熱ではんだを溶かす事である。

フラックスの役割について

フラックスには、はんだ付け性を向上させる役割があります。 そもそもフラックスがないとはんだが付きません。 (フラックスなしでもつけるような特殊な方法はありますが、一般的には付きません。)具体的には、基板の洗浄を行い、はんだを濡れ広がらせるための役割を持っています。 はんだ付けする銅の表面は、酸化物で覆われており、はんだ自体も酸化してしまうため、それら表面の酸化物を除去しないとはんだが付きません。 そのためフラックスで基板の洗浄を行う必要があります。 また、はんだ付けの際、加熱時に表面が酸化してしまうため、その酸化を防ぐためにもフラックスが必要になってきます。 そして、はんだ付けの切れ性をよくするためにもフラックスは必要です。 ※切れ性とは? はんだ付をしていてコテを抜いた時に銅についたはんだが引っ張られて角のような状態になることがあります。 しかし、フラックスがあることで、はんだがスパッと切れます。このことを切れ性と呼びます。 フラックスは大きく次の3種類に分けられます。 やに入りはんだのフラックス 液状フラックス ソルダーペーストのフラックス やに入りはんだのフラックスは、手付はんだもしくはロボットはんだ付けに使われ、液状フラックスは、噴流はんだ付けに使われ、ソルダーペーストのフラックスは、表面実装に使われます。 例えば、基板にソルダーペーストを印刷し、部品を乗せ、リフロー炉に入りはんだ付けします。この工程によるはんだ付けは、耐熱性のない部品にはできないため、その後で耐熱性のない部品は、ロボットや手付ではんだ付けをする、という流れで行われるのが一般的です。 フラックス含有量は、はんだ付け性に大きく影響します。 含有量が少なすぎるとはんだ付けに失敗する危険性が高まります。 逆に多すぎるとはんだ付け後のフラックスに残渣が残り、見た目が悪くなったりします。 またフラックス自体は電気を通さない性質であるため、はんだ付けする場所と関係のない電極に付いてしまうと、通電性が悪くなる原因にもなります。 そして、やに入りはんだのフラックス含有量は、そのフラックスの特徴等によって決められることもあります。 松脂に活性剤を溶かし込んだものがフラックスです。この活性剤には、はんだ付け性を大きく向上させる働きがあります。 そのため、はんだ付け性を向上させるために、活性剤を増やすということも考えられますが、活性剤が多すぎると腐食につながってしまうため注意が必要です。 腐食は、主に銅が腐食します。腐食が進行すると導通不良を起こしたりします。 各フラックスごとの活性剤の含有比率に関しては、次の図を参考にしてください。 以上、フラックスの役割についてご説明しました。 やに入りはんだとフラックスの関係について、次のページでも説明していますのでご覧ください(やに入りはんだとは?フラックスとの違いは?)。 またはんだ付けの基礎知識も公開しております。

表面実装でリフロー後のはんだ付け部のはんだに光沢がなくざらつき感がある問題を改善

相談内容 表面実装でリフロー後のはんだ付け部のはんだに光沢がなくざらつき感がある 何が原因だったか? リフロー炉のプリヒート時間が長く、ソルダーペーストのフラックスの劣化とはんだ粉末の酸化が進行したことが原因。 また、はんだ面の冷却速度が遅いとデンドライドが発生し白っぽく見える。 改善のためにどのような提案を行ったか? プリヒート時間を短くし、尚且つ220℃以上の時間も短くして全体のリフロー時間を短縮させ、冷却速度を早くさせることを提案。 改善方法 リフロー炉の温度設定とコンベアースピードを変更した。 プロファイルを三角形に近づけ、特にプリヒートでの加熱は上からの加熱を抑えるため上部ヒーターの設定温度抑え、下部ヒーターの設定温度を高くした。 コンベアースピードを上げ、全体のリフロー時間を短縮した。 基板材質・設計・サイズでプリヒートは調整が必要ですが、本加熱でははんだの融点以上の時間は全て同じで30秒~60秒です。 従来のプロファイルでのはんだ付け状態 従来の温度プロファイル はんだに光沢があり表面も滑らかでる 改善プロファイル

手はんだ付けの基礎 知識とやり方、注意点、フラックスの作用等

3大接合方法 接着 固体と固体 固体と固体の間にある接着剤が固まることで接合します。 嫌気性接着剤, 紫外線硬化型接着剤, エポキシ系接着剤, 他 溶接 液体と液体 金属と金属の接合で、それぞれの金属を溶かして接合します。 アーク溶接, ガス溶接, レーザー溶接, 他 はんだ付け 固体と液体 接合する金属とはんだとの間に合金層を形成して接合します。 はんだ付けとは はんだ付けは接合しようとする金属(銅、鉄等)より溶ける温度の低い金属を用いて金属同士を接合する方法で、 接合する金属とはんだの間に合金層を形成することにより接合を行うものです。 はんだと金属の接合面に合金層が均一に形成されていないものは接合が充分とは言えません。 はんだ付けの良し悪しははんだと金属の間に適度な合金層が形成される。 合金層 合金層は金属間化合物で硬くて脆い性質がある。 温度や時間の因子で金属間化合物は成長し、強い衝撃や振動を加えると接合部の割れにつながることがある。 ・こて先温度は必要以上に高くしない。 ・はんだ付けはできるだけ短時間で行う。 はんだ付けの4要素 適量のはんだの供給 …

やに入りはんだとは?フラックスとの違いは?

はんだ合金の中心部にフラックスが充填された線状のはんだの事。 中に充填されるフラックスの主成分が松ヤニであることから、このような”はんだ”の事を”やに入りはんだ”と呼びます。中に充填されるフラックスはメーカーにより異なります。 その充填されるフラックスの種類、そして合金の種類によってやに入りはんだの種類も異なってきます。弊社では現在、大きく分けて次の3種類があります。 ※フラックスの種類、合金の種類ではなく、加工技術に違いを出して製造されるやに入りはんだ「Shell-RC」は弊独自の技術を使った他にはないやに入りはんだと言えます。 SUPER AA級の信頼性のあるやに入りはんだ、汎用性が高い NEO スーパーよりもはんだ付け性を向上させて、残渣の色がきれい UX ステンレスにもはんだ付け可能 現在、錫を主成分として少量の金属を添加してはんだの合金として使用されています。 従来の鉛含有はんだと比較して、融点が30℃~40℃上がっております。 有鉛はんだの有害性が問題視される前までは有鉛やに入りはんだが主流でしたが、近年、鉛フリーやに入りはんだが一般的です。 一般的には0.3mm~2.0mmの線径のやに入りはんだが使われますが、やに入りはんだのはんだ線の太さは、はんだ付けされる電極の大きさで選定します。 具体的には、部品が大きく比較的、広範囲にわたってはんだ付けする必要がある場合には、太い線径のはんだを使い、小さく狭いところにはんだ付けする場合は、細い線径のはんだを使うのが一般的です。   松脂(ロジン)に活性剤を添加したものがヤニでありフラックスです。 糸はんだの中に入っているフラックスの事をヤニと呼びますが、ソルダーペーストの中に入っているフラックスの事はヤニとは呼ばれません。 また液状フラックスに対してもヤニという呼び方はしません。 以上のことから、フラックス=ヤニという呼び方はやに入りはんだ特有のものということができます。 フラックスとは、各はんだ材料で主要成分の割合が変わります。概ね4種類の原料を使っています。 フラックス含有量は、はんだ付け性に大きく影響します。 フラック含有量の少ないやに入りはんだはを使うと残渣を少なくさせることができますが、はんだの濡れ広がり性が落ちる傾向にあります。 フラックス含有量の多いやに入りはんだを使うと、はんだの濡れ広がりが良くなり作業性が良くなりますが、フラックスが多い分、飛び散りの発生が多くなる傾向にあります。 飛び散ったフラックスは電気が通りづらいため、接点に飛び散ると、通電性が悪くなる原因にもなります。 一般的には、2%~4%の含有量です。 基本的には、はんだの融点プラス50℃位(はんだ付け箇所)、加熱できるようなコテ先温度に設定すると良い結果が得られます。 (詳しくは、はんだ付けの基礎のページをご覧ください。) 以上、やに入りはんだについての説明と、フラックスについて説明を致しました。 フラックスに関しては、次のページもご覧ください(フラックスの役割について)。